『大吾、走る。』『一枚上手』『囚われの姫君』『他言無用!(前篇)』に続く、勇一・大吾シリーズ第四弾(その二)。
スポーツクラブで偶然出会った、美しい青年田上勇一と、むさくるしい巨漢安岡大吾。
普通の世界で出会った普通のゲイ二人の物語。
勇一が、上司の谷越と「思わぬ場所」で出くわした夜の翌日。
昼休みに突然、谷越から老舗高級料亭へと誘われた。
「――まずは、料理をいただこうか」
気まずい雰囲気の中、淡々と食事は進み、そして、
「私としては――君を失いたくない」
「……えっ」
一か月後。
いまだ勇一と連絡を取り合えない大吾は、勢いづいて勇一のアパートの前まで行き、電柱の陰で彼の帰宅を待っていた。
ところが警官に職務質問され、しかもその姿を、帰ってきた勇一に見られた大吾は、
「知らん! そんな人知らん!!」
駅に向かって全速力で掛け出した。
翌朝、二日酔いと自己嫌悪で布団を頭からかぶっていた大吾のケータイに勇一からのメールが届く。
――『よろしければ、安岡さんのご都合の良い日にお会いしたいのですが、いかがでしょうか』
「……っしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
だが、いよいよ、勇一と会う約束の日になって――
【本文より抜粋】
「それじゃ。お大事にな」
逃げるように部屋を出ようとした。
「待って! 待ってください!!」
悲痛なほどの叫び声に、玄関でスニーカーに半分突っ込んでいた大吾の足が止まる。
振り返ると、勇一の姿がない。
「……ん」
部屋に戻ると、勇一は押し入れのふすまを開けて、下段に二箱ある段ボールの一つに手を掛けていた。
「あ、ああっ、俺が出すから」
と、大吾が思わず差し出した手が勇一の手と重なり、
「あっ、すみませんっ」
「す、すまんっ」
同時に謝ってから、あらためて大吾が箱を取り出した。みかんの絵が描かれていたので、腰に力を入れたものの、さほど重くはない。
「開けて……いただけませんか」
勇一の硬い面持ちが気になりつつも、大吾は箱のふたを慎重に開けた。しかし、予想とは異なり、一番上に敷かれた新聞紙が顔を出す。
意味がよくわからず、目を伏せたままの勇一を見る。
「それも、除《よ》けてください」
震える声に心が迷ったものの、言われた通り新聞をどけると、その下からは、
「……お、ぉぉっ」
400字詰原稿用紙換算約185枚。作品の一部を収録した無料体験版あり。
シリーズ物ですので、ご購入の前に、できればこれまでのシリーズ作品もご購入いただくか、あるいは各話体験版・作者サイトの解説ページをご覧ください。
HTML・PDF・EPUBの三形式作品ファイル同梱。(内容はすべて同じです)
※タイトル通り、中篇のみ(未完結)ですのでご注意ください。
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