海外出張がちな夫と、要領の悪い大学生の息子・貴也。専業主婦の増川結子は、息子の留年を阻止するため、親切な同級生二人を自宅の勉強会へと招き入れる。だが、それは平穏な日常を地獄へと変える引き金だった。優等生の高井と体育会系の佐々木。二人の若き肉食獣は、息子のすぐ隣で結子の成熟した肉体を段階的に侵食していく。恐怖と罪悪感の裏側で、長年忘れていた「女」の悦びに目覚めていく結子は、ついに最悪にして最高の瞬間を迎えることに――
総字数 約21,500字
〈冒頭2,000字〉
「たかや、本当にもう後がないのよ? 今回の再試験を落としたら、留年が確定してしまうんだから」
増川結子は、キッチンで夕食の片付けをしながら、ダイニングテーブルで頭を抱えている一人息子の貴也に、優しく、しかし切実な声をかけた。
「わかってるよ、母さん……。でも、今回の数理解析の試験、教授の採点がめちゃくちゃ厳しくてさ。俺一人じゃどうにも理解できないところが多くて……」
弱り切った声を出す貴也は、都内の私立大学に通う二年生だ。根は真面目で、サボるような子ではないのだが、要領が悪く、専門的な講義に一度ついていけなくなると、ずるずると泥沼にハマってしまう癖があった。今回の再試験は、進級のために絶対に落とせない最後の砦だった。
夫は商社勤めで海外出張が多く、平日はほぼ不在。結子は三十九歳という若さながら、家事全般を完璧にこなし、家庭を守る専業主婦として、何よりも息子を第一に考えて生きてきた。
ふと、キッチンのガラス窓に自分の姿が映る。
緩やかなウェーブのかかったミディアムヘアに、デコルテが少し覗く薄手のVネックのサマーセーター。その上から、淡いピンクのエプロンを身につけている。年齢を感じさせないキメの細かい白い肌と、家庭的な温かみ。そして、完璧に引き締まったウエストから、タイトなジーンズ越しに覗く肉感的なヒップのライン。
結子自身は「もう若くないから」と控えめに振る舞っているが、その佇まいには、大人の女性が持つ隠しきれない柔らかな色気が漂っていた。
「だったら、誰か勉強の得意なお友達に頼んで、教えてもらうわけにはいかないの?」
「うーん……。実はさ、同じクラスの高井と佐々木が、俺の再試験のために勉強会を開いてくれるって言ってくれたんだ。あいつら、めちゃくちゃ優秀で、テストもいつも上位なんだよ」
「あら、そうなの? それは本当にありがたいわね」
結子の顔に、ぱっと明るい笑みが浮かんだ。
「本当にいいお友達を持ったわね。だったら、うちで勉強会をしたらどうかしら。お母さん、お茶や美味しいおやつを用意して歓迎するわよ。大学の図書館とかじゃ、集中して声も出せないでしょう?」
「えっ、いいの!? あいつら、家が近いからその方が助かるって言ってたんだ。母さん、ありがとう!」
貴也はそれまでの暗い表情を一変させ、嬉しそうにスマートフォンを操作し始めた。
自分のことのように胸を撫で下ろす結子は、この提案が、自らの平穏な日常を地獄へと変える引き金になるとは、夢にも思っていなかった。
〇
二日後の午後。
約束の時間通りに、インターホンが鳴り響いた。
「はい、どちら様でしょうか」
結子が玄関のインターホンに出ると、爽やかで落ち着いた若者の声が返ってきた。
「あ、お忙しいところ恐れ入ります。貴也くんの同級生の高井です。勉強会に伺いました」
「あ、いらっしゃい! 今開けますね」
結子はエプロンをきれいに整え、ドアを開けた。
そこに立っていたのは、事前に貴也から聞いていた通りの、好対照な二人の若者だった。
「初めまして、お母さん。いつも貴也くんにお世話になっています、高井です」
名乗った高井という青年は、仕立ての良いシャツをさらりと着こなし、知的な眼鏡の奥から、涼しげで端整な笑みを浮かべていた。その仕草や挨拶は非常に礼儀正しく、一目で「育ちの良い優秀な学生」だとわかる雰囲気を持っていた。
「どうも、佐々木です。お邪魔します!」
その隣に立つ佐々木は、Tシャツの上からでも分かるほど、がっしりとした逞しい体躯をしていた。日に焼けた肌に、少し崩した軽いノリ。体育会系のアスリートを思わせる、野性的でハツラツとした印象の若者だった。
「まあ、ご丁寧にありがとうございます。貴也の母の結子です。こちらこそ、不肖の息子がお世話になってしまって……。さあ、狭いところだけど、上がってちょうだい」
結子は優しく微笑み、二人を家の中へと招き入れた。
「失礼します」と行儀よく靴を揃えて上がる高井と、少し緊張した面持ちで「お邪魔しまーす」と続く佐々木。
二人が結子の横を通り抜ける瞬間、若者特有の、生々しく熱を帯びた「オトコ」の匂いがふわっと鼻腔をくすぐった。結子は無意識のうちに、少しだけ胸がドキリと跳ねるのを感じ、慌ててそれを「緊張のせいだ」と自分に言い聞かせた。
勉強会の場所は、二階にある貴也の部屋に
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