倉田優佳は、来月に結婚式を控えている、ごく普通のOL。ある金曜の夜、会社の先輩である智子に拝み倒され、取引先の男性・鈴木拓也との飲み会に付き合うことになった。
穏やかで紳士的に見えた鈴木。だが、酒が進むにつれ、智子の強引さはエスカレート。終電を逃した挙句、「優佳の部屋で飲み直そう」と言い出す始末。断り切れない優佳は、渋々二人を自室に招き入れた。
そして翌朝。智子は「仕事がある」という身勝手な理由で、まだ眠っている(はずの)鈴木を部屋に残し、優佳のもとから一人で去ってしまう。
ワンルームマンションという密室に、昨夜とは別人のように欲望を隠さない鈴木と、二人きりにされた優佳。 「帰ってください!」と必死に抵抗する彼女だったが、男の執拗な懇願とむき出しの欲望からは逃れられず……。
たった一夜の過ちが、婚約者を愛する優佳の心を、取り返しのつかない快楽と絶望で満たしていく。
総字数 約9000字
〈本文より〉
鈴木に案内されて入ったのは、彼がよく利用するという隠れ家のようなダイニングバーだった。照明が落とされた店内を抜け、通されたのは完全にプライベートが保たれた個室。厚い扉が閉まると、街の喧騒が嘘のように遠ざかった。 席について改めて鈴木を見ると、彼は優佳のことをじっと見つめていた。その視線に気づき、優佳は少し頬が熱くなるのを感じた。彼は、可愛いというよりは美人だ、とでも思っているのだろうか。
〇
「ちょっと智子さん! 鈴木さんはどうするんですか!」 玄関先まで追いすがり、ほとんど悲鳴に近い声で優佳は訴えた。しかし、智子は悪びれる様子もなく、ひらひらと手を振るだけだった。「大丈夫だよ、大丈夫。なんかあったら電話してよ。とにかく時間だから、じゃあね!」 その無責任な言葉を最後に、玄関のドアは無慈悲に閉ざされた。優佳は、一人、部屋に取り残された。床に敷かれた布団からは、相変わらず鈴木の静かな寝息が聞こえていた。
〇
「きゃっ……! ちょ、ちょっと、困ります!」 それが鈴木だと認識した瞬間、全身の血が凍りつくような感覚に襲われた。「だってさ、俺、我慢できなくなってきちゃったよ……」 囁くような、しかし欲望に満ちたその声は、優佳の恐怖をさらに煽った。 「そんなこと言われても困ります!そっちの布団に戻ってください!じゃなければ、帰ってください!」 本気の怒りと拒絶を込めて、優佳は声を振り絞った。しかし、鈴木は引き下がるどころか、さらに体を密着させてくる。
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